普段の食事をパワーアップ!
知られざる“かまぼこの底力”とは。


かまぼこは、手軽にたんぱく質を摂取するのに優れた食品。
けれど、「かまぼこの何が、どういいのか」、知らない人も多いはず。
そこで、いちまさ(一正蒲鉾)と産学共同で研究を行っている関西大学化学生命工学部の
福永健治教授に、かまぼこについて詳しく教えてもらいました。 

そもそも、たんぱく質は人間にとってどれくらい大切なのでしょうか?

たんぱく質は、ヒトの体をつくっている約60兆個の細胞の主成分です。毛髪や皮膚、爪、歯、骨、筋肉、内臓などの諸器官をつくり上げているのはもちろん、酵素やホルモンとして生体の恒常性を維持したり、血液中のヘモグロビンやトランスフェリン、血清リポたんぱく質として物質輸送を担っています。ヒトの体をつくり、生命活動を担うなど、たんぱく質は私たちにとって欠かせない栄養素なのです。

けれど、古くなったたんぱく質は壊されて、短いもので数分、長くても数カ月で新しいものに入れ替わってしまうのです。だからこそ、常に摂取し続けることが必要です。

たんぱく質を摂取するときに気をつけたいことはありますか?

たんぱく質を摂取するとき、ただ単に量をたくさん摂取すればいいというわけではなく、質を重視しなければなりません。たんぱく質を構成するアミノ酸は20種類あり、このうち体内で合成できない9種類を必須アミノ酸と呼んでいます。この必須アミノ酸をバランス良く含んでいると、「良質なたんぱく質」だと言えるのです。

■必須アミノ酸(9種類)
バリン、スレオニン、イソロイシン、フェニルアラニン、ロイシン、トリプトファン、メチオニン、ヒスチジン、リジン

■非必須アミノ酸(11種類)
アルギニン(小児では必須)、グリシン、アスパラギン、アラニン、グルタミン、セリン、プロリン、チロシン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸

ほとんどの動物性たんぱく質は必須アミノ酸を十分に含んでいますが、植物性たんぱく質は不足している必須アミノ酸があるので注意しなければなりません。体内でのたんぱく質の合成は、必須アミノ酸の摂取レベルに合わせて制限されてしまうので、十分な量のたんぱく質を摂っているつもりでも実は足りていないということもあります。だから、植物性たんぱく質は、複数品目を食べることで不足する必須アミノ酸を補う必要があります。

かまぼこに含まれるたんぱく質には、どんな特徴がありますか?

食品中の必須アミノ酸の含有比率を評価するための数値が、「アミノ酸スコア」。理想的なたんぱく質を100とした場合、食品がどれだけ理想値に近いかを示します。かまぼこのたんぱく質は、必須アミノ酸をバランス良く含んでいるため、アミノ酸スコアは100と優秀です。

●主な食品のアミノ酸スコア
動物性 鶏肉 100
動物性 豚肉 100
動物性 牛肉 100
動物性 鶏卵 100
動物性 さけ 100
動物性 かまぼこ 100
植物性 大豆 100
植物性 とうもろこし 74
植物性 玄米 68
植物性 白米 65
植物性 小麦粉 44

動物性のたんぱく質では鶏肉や豚肉、牛肉、魚もありますが、かまぼこの特徴を言えば、低カロリーで脂肪が少ないというところ。高カロリー食や脂肪を避けている人にとっては、ヘルシーで良質なたんぱく質を摂取できます。

一方、植物性のたんぱく質は貧弱で、多くの植物性食品のアミノ酸スコアは100未満。米や小麦などの穀物では、必須アミノ酸のリジンが不足しています。リジンが不足すると、たんぱく質を合成するという意味では十分に役に立ちません。

かまぼこの効果的な食べ方はありますか?

かまぼこには、ご飯や麺類がよく合います。ご飯にかまぼこを数枚合わせたり、うどんやそばにかまぼこをのせたりすると、おいしいのはもちろんですが、米や小麦などの穀物に不足しているリジンをかまぼこが補ってくれるので、たんぱく質の吸収をベースアップできるのです。しかも、単純に1+1=2ではなく倍以上の効果をもたらします。

最近は糖質を気にする人がいますが、ご飯や麺類などの糖質を全く食べないのはいけませんね。たんぱく質は糖がないと消化吸収されず、せっかく食べてもエネルギー源にはなるのですが、たんぱく質として体に迎えられません。だからこそ、ご飯を毎食一膳は絶対に食べてほしいですね。

また、かまぼこは良質なたんぱく質を含んでいる上に、糖質も少し入っています。だから、たんぱく質の吸収という面でも機能的に良いと言えますね。

かまぼこを日々の食生活に取り入れていくポイントは?

かまぼこは保存性が高く、調理しなくてもそのまま食べられるので、すごく手軽にたんぱく質を補給できるというのが一番大きな魅力だと思います。例えば、ごぼう天をそのままかじれば、それだけでたんぱく質の補給になります。

さらに、さまざまな料理に魚肉練り製品を取り入れて楽しむのもおすすめです。カニかまならマヨネーズで和えてパンに挟んでサンドウィッチにしたり、ポテトサラダに入れたり。ちくわなら筑前煮に入れるのもいいですね。いつものメニューにさっと加えるだけで、食事から摂取できるたんぱく質の底上げにもつながりますよ。

どんな人にかまぼこがおすすめですか?

かまぼこは調理の面で扱いやすい上、脂肪が少なく消化もいいことから、高齢者にとって食べやすいものだと思います。高齢者はたんぱく質が不足しがちなので、積極的に普段の食事に取り入れてほしいですね。

育ち盛りの子どものお弁当にも、手間をかけずにちょっと加えるだけで、たんぱく質をアップできます。忙しいお母さんに、かまぼこを活用してもらえればと思います。

また、かまぼこはアスリート食にも最適。運動する前にたんぱく質を摂取すると、筋肉のたんぱく質の合成をより促進し分解を抑制するので、効率的に筋肉を増大できます。かまぼこは血糖値が急に上昇することなく消化も良いので、運動する前に食べても大丈夫。筋肉の疲労を軽減する効果が期待できますよ。

いつものメニューにかまぼこを“ちょい足し”して、楽しみながら良質なたんぱく質の摂取につなげてほしいですね。

関西大学化学生命工学部生命・生物工学科
福永健治 教授


魚肉たんぱく質や魚油の健康機能に着目し、魚介類摂取による抗がん効果に関する研究や、魚油の摂取が健康におよぼす影響についての研究を行っている。研究者としての視点だけでなく、日本独自の食文化としてかまぼこなどの魚肉たんぱく製品を未来へ受け継いでいきたいとの思いから、産学官での共同研究にも積極的に取り組む。