世界へ、1000年先へ伝えるために
魚肉たんぱく質を研究する。


カニかまやかまぼこは「魚肉たんぱく質」が手軽に摂れる食品。
海外でも「フィッシュプロテイン」と呼ばれて注目されているそうです。
いちまさ(一正蒲鉾)では、どんな「魚肉たんぱく研究」が始まっているのか、
商品開発部 研究開発課 中野晃さん にお話を聞きました。

なぜ今「魚肉たんぱく質」が注目されているのでしょうか?

2018年に放送されたテレビ番組で「カニかまを食べると筋肉増強の効果が期待できる」と取り上げられたのをご存知ですか? それをきっかけに、カニかまがブームになりました。これまであまり注目されることはありませんでしたが、魚のすり身から作られるかまぼこは、たんぱく質を摂取するには非常に優れた食品なのです。

弊社ではかねてからレモン風味、みかん風味、ソーダ風味などを開発しており、カニかまブーム以降もメディアに取り上げていただき話題になりました。しかし、私たちとしてはオリジナル商品を提供するだけでなく、魚肉たんぱく製品が健康に有益な食品であることをもっと知っていただきたいという思いもあります。だからこそ、魚肉たんぱく質の研究に力を入れているのです。

私が所属する商品開発部研究開発課ができたのは2016年で、これまでは商品をよりおいしくするための技術研究を行ってきました。それに加えて、新たに取り組み始めた魚肉たんぱく質の研究は、かまぼこを食べると健康機能面でどんな効果が期待できるのかを明らかにしていくものです。魚肉たんぱく質を摂取することは筋肉増強が望めるだけでなく、その他にも、例えば生活習慣病の予防や免疫力の向上につながるなどの有益性があるのではないかと考えています。
そこで、魚肉たんぱく質の健康機能について研究成果を出せるよう、産学共同の研究プロジェクトを立ち上げました。かまぼこの購買層は高齢者の方が中心となっていますが、研究で明らかになった情報を発信することで、幅広い世代のお客さまにかまぼこなどの魚肉たんぱく製品を手に取ってもらいたいと考えています。

産学共同の取り組みについて、お聞かせください。

弊社はさまざまな大学と産学共同の取り組みを行っておりますが、魚肉たんぱく質の健康機能に関する研究は、関西大学化学生命工学部の福永健治教授と共同で行っています。
福永教授は「かまぼこはアミノ酸スコアが非常に高く、必須アミノ酸の充足という点で素晴らしい効果がある」とおっしゃられていて。健康機能面での研究だけでなく、日本伝統の食文化として練り製品(魚肉たんぱく製品)を今後も受け継いでいきたいという熱い思いもお持ちです。そんなお話や熱意に感銘を受け、福永教授との共同研究によって、業界全体や日本の食文化の発展にも貢献できたらと思っています。

どんな共同研究をされているのでしょうか?

まだ研究が始まったばかりで具体的な成果を外部に発表できる段階ではないのですが、生活習慣病の予防につながるような研究をしていきたいと考えています。さまざまな角度から検証を行い、実際にどれくらいの効果があるのか研究を始めています。

その他にも福永教授は、実験動物を用いて「魚肉たんぱく質給餌による大腸がんの抑制」という研究をされているんですよ。魚肉たんぱく製品を食べることで、大腸がんの発症を抑制することが人でも証明されれば、ものすごくインパクトがあると思います。

素晴らしい!ところで健康的な食事についての合言葉があるとか?

福永教授がかまぼこについてご講演されるときに、必ずお話しになる一言が「ご飯一杯に、かまぼこ二枚を食べよう」なんですよ。たんぱく質は、糖質と一緒に摂取すると有効だと言われています。魚肉たんぱく質とともにご飯の糖質も摂取することで、アミノ酸が吸収しやすくなる。つまり魚肉たんぱく質の効果が非常に高くなるんですよ。ですから福永教授は、ご飯とかまぼこを一緒に食べようと提案しておられるのです。ご飯の代わりにうどんでもいいです。うどん屋さんへ行くと、かまぼこが何枚かのっているのは理にかなっているということですよね。

ご飯に合う魚肉たんぱく製品を開発できると、先生が提唱されている食べ方を実践できるのではないかと思います。ちなみに弊社には、「うな次郎」という商品があります。これは、練り製品でありながら見た目も味付けもうなぎの蒲焼風ですので、ご飯と一緒に召し上がっていただくのに最適です。

他にも、「こういう食べ方をすると体に良い」ということが分かれば、それに沿った商品を私たちがお客さまにご提供していくことが大事だと思います。研究を反映した商品を開発していきたいですね。

理にかなった食文化がある。後世に受け継ぐためには?

かまぼこは、900年の歴史がある伝統食です。でもかまぼこって、「高たんぱく、低脂質、低カロリー」だという健康に有益な面はあまり知られずに、「添加物が多い」とか「塩分が多い」といった思い込みを持ち続けている方も多くいらっしゃるんですよね。それが残念で、残念で。

だからこそ、私は入社以来、お客さまが見たときに分かりやすい食品表記になるよう、開発を続けてきました。減塩への取り組みや、シンプルな材料を使うことにこだわり、安全・安心をモットーに技術開発や商品開発に携わっています。

今、高齢者からはご支持を受けているものの、30〜40代よりも若い世代はかまぼこを食べる機会が減っています。こんなに高たんぱく質でおいしいものだからこそ、子どもの頃から食べ続けてほしいのです。

そのためには、これからの時代のニーズに合うよう進化させなければなりません。1000年後も魚肉たんぱく製品が、形を変えて食べ続けられるものであってほしいから。私たちの魚肉たんぱく研究も続いていきます。

一正蒲鉾株式会社 商品開発部 研究開発課 中野晃さん

入社以来、技術開発・研究一筋に携わる。シンプルな材料でもおいしく賞味期限が長い商品、安全・安心が分かる商品作りにこだわってきた。研究開発課を束ね、全国をとび回っている。